生前にしておきたい相続対策。遺産分割対策、納税資金対策、節税対策の3つが大切

生前にしておきたい相続対策

相続税というと、「一部の資産家に関係すること」、「一部のお金持ちの悩みで自分には関係のないこと」だというイメージを持たれている方がいらっしゃると思います。

ところが、平成25年度の税制改正において、相続税の基礎控除が2,000万円減少し、法定相続人の比例控除分が1人当たり400万円減少と大幅に縮小されました。

このことによって、相続税の課税対象となる方の割合が一気に増加しました。

今では、相続税は自分には関係ない話ではなくなっています。

例えば、主な財産が自宅だけという普通のサラリーマンの家庭でも相続税が発生する可能性があります。

遺産が不動産がメインで、現金がほとんどないケースは「争族」に発展するケースがみられます。

そして、仲が良かった家族でさえ、残念ながら争いが起こることもあります。

今回は相続税の対策、争族回避のための対策など、生前にできる大切な相続対策についてご案内します。

相続対策が必要な主なケース(争族になりやすいケース)について

冒頭でも少し触れましたが、一般的に現金をたくさん持っている資産家は、最終的には現金で解決できるため、たとえ争族が起こっても対処できる確率が高いといえます。

しかし、遺産が不動産中心で現金がほとんどないケースなどは、遺産分割において揉め事が起こる可能性が高く、争族に繋がるケースがよくみられます。

他にも争族に発展しやすいケースはいくつか挙げられます。

「争族」に発展しやすいケース

  • 自宅以外の財産がほとんどなく(主な相続財産は不動産だけ)、相続人が複数いる
  • 被相続人に配偶者はいるが子どもはいない
  • 相続人が多い
  • 被相続人が2度以上結婚し、それぞれ子どもがいる
  • 特定の相続人が多額の贈与を受けていた
  • 特定の相続人が、被相続人の介護を一人で行っていた など

もしあなたが上記のケースに該当するなら、できるだけ早く相続の準備を始めることが、争族を防ぐポイントになります。

相続対策を行う前に大切なこと

相続対策はできるだけ早めに行うことが大切ですが、いつから始めれば良いのでしょうか。

その答えは、「生前に」、「できるだけ早く」ということです。

相続が発生した後にできる対策ももちろんありますが、それは限定されてしまいます。

相続対策は生前からある程度の時間(年数)をかけて、しっかりと取り組むことで希望の結果が得られます。

では、相続対策の3つの柱についてご説明しますが、その前に大切なことがあります。

それは、相続対策を行う前に「相続財産の内容を確実に把握する」ということ。

財産の内容や総額が分からなければ、誰にどのように財産を分けるか、相続税がかかるのか・かからないのか、相続税がかかるならどのように準備するか検討できないからです。

相続はとてもデリケートな問題のため、話すことを避けてしまう傾向がありますが、遠慮して話し合いをしていなければ相続発生後トラブルに繋がってしまうことがあります。

相続対策の3つの柱

相続対策の柱とは次の3つです。

この3つをバランスよく取り入れた対策を行うことで、効果的な相続対策が可能となります。

相続対策の柱

  1. 相続税の節税対策
  2. 相続税の納税資金対策
  3. 遺産分割対策(争族回避のための対策)

①相続税の節税対策

この対策は、納める相続税をいかに少なくするかということです。

相続税の節税対策として効果のある方法は、財産の総額を減らすことです。

有効なのは「生前贈与」を利用することです。

例えば、110万円の基礎控除を利用した連年贈与や次の特例を利用した贈与などがあります。

  • 配偶者に居住用の不動産を贈与する
  • 子や孫に住宅取得資金を贈与する
  • 子や孫に教育資金を贈与する
  • 子や孫に結婚・子育て資金を贈与する

生前贈与について詳しく知りたい方はこちら↓をご覧ください。

生前贈与について生前贈与について。贈与と認められないケースがある?注意点や方法について解説します

贈与税の税率は相続税の税率と比べて高く設定されていますが、このような基礎控除や特例を上手に活用することによって効果的に財産の総額を減らすことが可能です。

生前贈与は「贈与する時期」について注意しなければいけません。

それは、「相続発生前3年以内の贈与」は、相続財産に取り込まれてしまい相続税の対象になってしまうからです。
(配偶者の居住用不動産の贈与の特例や子などへの住宅取得資金や教育資金などの贈与の特例は除く)

生前贈与を最大限に活用するためには、「相続発生前3年以内の贈与」にならないように早くスタートさせることです。

生前贈与の他に、相続人の数を増やすことも有効な相続税の節税対策となります。

相続人の人数が増えれば基礎控除額が増え、適用される税率も低くなります。

養子縁組は相続税の節税対策として有名です。

養子縁組による相続税の節税対策について詳しく知りたい方は、こちら↓をご覧ください。

養子縁組による相続税の節税対策相続税の節税対策。養子縁組で相続人を増やす対策

また、生命保険に加入することや自宅の増改築を行う、アパートなど賃貸用建物を建てることなども相続税の節税対策として効果的です。

生命保険を利用した相続税対策については、こちら↓をご覧ください。

相続税対策。生命保険を活用した子への贈与。相続税の節税対策。子への贈与で生命保険を活用する方法

②相続税の納税資金対策

相続税がかかりそうなら、納税資金をどのように準備するかを検討しなければなりません。

相続税は、「相続発生から10ヶ月以内に現金で一括納付」が原則です。

特に、相続財産のほとんどが不動産という場合は、事前に納税資金を準備しておかなければ、相続が発生した時に困った事態に陥ってしまうことになります。

相続税の納税資金の対策は、生命保険を活用するのが効果的です。

その際、「終身保険」で準備しましょう。

相続人が受け取った死亡保険金は、「500万円×法定相続人が数」までは非課税となるメリットもあります。

非課税の対象となる契約形態は、「契約者(保険料負担者)、被保険者が被相続人」、「保険金の受取人が相続人」の死亡保険金に限られているのでご注意ください。

生命保険を利用した相続税の納税資金対策について詳しく知りたい方は、こちら↓をご覧ください。

贈与税とみなされない生命保険の正しい加入方法贈与税とみなされないための生命保険の正しい加入方法について

相続税額の見込みが大きい時には、延納や物納、場合によっては銀行からの借入も考えなければならない場合があります。

やはり、納税資金対策についても早めに取り組んだ方が有利です。

③遺産分割対策(争族回避のための対策)

三つ目の「③遺産分割対策」が実は、①の節税対策や②の納税資金対策よりも大切なことかもしれません。

残された家族が争わないように遺産分割対策をしっかり行うことが大事です。

ただ、相続対策の中でもこの遺産分割対策が最も難しいとも言われています。

遺産の分割については、家族で話し合って決めることが理想ですが、なかなか家族全員が納得することは難しい場合があります。

そのような時に有効な手段は「遺言書の作成」です。

被相続人が、自分の財産を誰にどのように分配するのかという遺言を残すことがトラブルを未然に防ぐことになります。

遺言書は一般的に自筆で書くか(自筆証書遺言)、公証人に作成してもらうか(公正証書遺言)を選択します。

自筆証書遺言について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

自筆証書遺言自筆証書遺言の作成ルールや注意点、メリット・デメリット。発見後の手続き方法も解説します

公正証書遺言について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

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