相続税の節税対策の一つに、「養子縁組によって相続人を増やす」方法があります。
平成29年の最高裁の判決において、相続税対策として養子縁組を認める判断がなされました。
このことからも、相続税の節税対策で悩んでいる方には、養子縁組は有効な手段の一つになります。
目次
なぜ養子縁組は相続税対策になるのか(メリット)
養子縁組は相続税の節税対策になるということを聞いたことのある方は多いと思います。
なぜ、養子縁組には相続税の節税効果があるのでしょうか。
それは、養子縁組をすることで法定相続人が増えるため、その分基礎控除額を増やすことができるからです。
また、適用される累進税率を下げられることや生命保険金や死亡退職金の非課税枠を大きくすることもできます。
養子縁組の節税効果(メリット)
- 基礎控除額が増える
- 累進税率を下げられる
- 生命保険金や死亡退職金の非課税枠を増やす
①基礎控除額が増える
基礎控除額とは遺産総額から差し引ける額のことで、次の計算式で算出します。
以上の計算式より、相続人が1人増えるごとに基礎控除額を600万円増やすことが可能です。
②累進税率を下げられる
相続人が増えると、各相続人の法定相続分に応じた取得金額が小さくなるため、適用される累進税率の区分が変わります。
そのため、養子縁組は相続税の節税効果が高くなります。
③生命保険金や死亡退職金の非課税枠を増やす
亡くなった方が契約者で、かつ被保険者であった死亡保険金には非課税枠があります。
非課税枠の計算式は次のとおりです。
この計算式によって、相続人が1人増えるごとに、非課税金額が500万円増えるため養子縁組には節税効果があります。
以上のように、養子縁組にはいくつかの節税効果がありますが、さらに、節税だけでなく相続権のない人に財産を相続させる手段としても用いることができます。
例えば、お世話になったお嫁さんに財産を与えたいとき等養子縁組は有効な手段になります。
養子縁組の注意点(デメリット)
養子の数の制限
相続税の計算上、法定相続人の数の中に含めることができる養子の数は限られています。
これは、相続税対策だけで不当に養子縁組をすることを防ぐためでもある制度でもあります。
- 実子がいる場合は1人まで
- 実子がいない場合は2人まで
相続税の2割加算
相続税は、遺産を受け取った人によって相続税額が2割加算される場合があります。
例えば…
- 配偶者ではない人
- 被相続人の一親等の血族ではない人
- 被相続人の養子となった被相続人の孫
などが2割加算の対象者です。
具体的にいうと…
- 孫
- 兄弟姉妹
- 子供の配偶者
- 親族ではない人 など
この中で注意が必要なのは、孫を養子にするケースです。
孫を養子にする場合、亡くなった人の子供の相続税を1回免れることになるため、孫は2割加算の対象となります。
養子縁組の手続き方法
養子をとる場合には、例えば、おじ、おば等上の世代の親族や年長者を養子にすることはできません。
それ以外の人であれば、血縁関係とは関係なく養子縁組はできます。
手続きは、市区町村の窓口でもらえる「養子縁組届」に養親と養子、証人2人が署名・押印して役所に届ければ成立します。
ただし、養子が未成年者の場合は、原則、家庭裁判所の許可が必要になります。
養子縁組には節税効果というメリットがありますが、注意点もあるため実行前にはよく検討することが大切です。
また、養子縁組をきっかけに揉め事に発展するケースもみられますので、少なくとも他の相続人の同意を得るなどの配慮が必要です。