せっかく苦労して遺言書を作成しても、最終的に遺言書の内容が実現されなければ、その目的を達成することができません。
遺言書の内容を実現するために、次の2つの方法があります。
- 相続人全員で共同して行う方法
- 遺言執行者が遺言執行の手続きを行う方法
遺言執行者とは、一言で言うと遺言者が亡くなった後、遺言書の内容を実現するための手続きを行う人のことを指します。
②の場合に、もし遺言書に遺言執行者を誰にするか記入されていない時は、家庭裁判所に遺言者を選任してもらうための手続きが必要になります。
遺言執行について
遺言執行とは、遺言書の内容を法的に実現することです。
この遺言執行は、被相続人(遺言者)の生前の意思を実現するための行為なので、法律上は被相続人の権利や義務を承継した相続人で行わなければなりません(上記①)。
しかし、遺言書の内容によって相続人間の利害が対立していたり、遺贈等で財産を受け取る人に相続人が財産を渡すことを嫌がったりすることもあります。
このように相続人同士でトラブルが起こっている(起こる可能性がある)場合に、相続人全員で協力して遺言書の内容を実現することは難しいと言えます。
このような時のために、相続人全員に代わって「遺言執行者」が遺言書の内容を実現する制度があります(上記②)。
ただし、遺言書の内容が、例えば長男Aの相続分を3分の2、次男の相続分を3分の1とするような相続分の指定があった場合、遺言書だけでは不動産等の具体的な財産を誰に相続させれば良いかわかりません。
そのため、遺言執行の手続きを行うことはできず、法定相続と同様に遺産分割協議を行うことになります。
遺言執行者の選任方法について
遺言執行者を選任する方法は次の2つがあります。
- 被相続人(遺言者)があらかじめ遺言で遺言執行者を指定しておく方法
- 相続開始後に相続人等の関係者が家庭裁判所に手続きを行い、遺言執行者を決めてもらう方法
遺言執行者は、未成年者や破産者はなれませんが、これら以外であれば基本的に誰でも遺言執行者になれます。
もちろん、職業等に制限はありません。また、法人もなることができます。
一方で、家庭裁判所に手続きする方法は弁護士等の専門家が選ばれることが一般的です。
遺言執行者が専門家(弁護士)の場合のメリットは、相続の各種手続きの期限に間に合うようにスムーズに進めてくれることです。
逆にデメリットは報酬を支払う必要があることです。
遺言書を作成する時に、あなたの人間関係や財産について分かっている人に手続きしてもらいたい場合や迅速に遺言書の内容を実現したい場合など、遺言書に遺言執行者を誰にするか記載しておきましょう。
遺言執行の手続き方法
遺言執行者が手続きする際の注意点は、一部の相続人だけを優位に、または不公平に扱ってはいけないことです。
被相続人の指定で遺言執行者になった場合、その人が遺言書を持っていることが一般的でしょうから、公正証書遺言以外は検認の手続きを行わなければなりません。
また、法務局保管制度を利用した自筆証書遺言の場合、法務局から遺言の証明書を取得します。
自筆証書遺言保管制度について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
自筆証書遺言書保管制度とは?法務局による保管制度の手続きの流れや必要書類、料金について検認手続き後、又は法務局からの証明書の取得後は、直ちに相続人全員に対し遺言書に遺言執行者として指定されていることを通知します。
指定されている人が遺言執行者になることを承諾した場合、遺言書の写しを各相続人等に交付し、被相続人の財産目録の作成及び相続人へ提示した上で、預貯金の解約や分配、不動産の名義変更等、遺言書に記載されている内容を実現していくことになります。
遺言執行人は相続人全員に正しい財産目録を開示しなければならないことに注意してください。
遺言書の作成や手続き等でお困りの方は、静岡相続手続きサポートセンターにお気軽にお問い合わせください。