税理士に依頼せずに相続人が自分で相続税の申告をした場合、税務調査に選ばれる確率は高くなります。
それは、相続税の申告はとても複雑なので自分で申告すると間違いやすく、また、申告書を作成する上で必ず精査しなければいけない大切な項目を見落としがちになるからです。
このように、税理士に依頼せず自分で行うと間違いが起こることが多く、時にはその間違いが相続人にとって不利に働くことがあります。
相続税の税務調査に選ばれやすい人、選ばれやすい申告書について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
相続税の税務調査の実態について。調査に選ばれやすい人・選ばれやすい申告書とは?今回は、相続税の税務調査の注意点として、税務調査の当日に調査官からよく質問されることについてご紹介します。
目次
相続税の税務調査で大切なこと
税務署の調査官は、相続税の調査に入る前に必ず入念に被相続人や相続人の財産であるお金の動き等を調べてきます。
その上で知らないふりをして質問してくることがあります。
この時、調査官の質問に対して嘘を言って取り繕ってもバレてしまい、調査官の心証を害することになってしまいます。
そうなると調査がますます厳しくなる可能性があります。
そうならないように、調査官の質問には嘘をつかないで答えることが必要です。
嘘をつくと、場合によっては重いペナルティーが課される(重加算税)こともありますので注意してください。
また、質問以外のことは答えないというスタンスも大切です。
特に話し好きの人は、ついつい余計なことまで言ってしまい、不利な状況に陥ってしまうこともあるからです。
正直に答えるが、余計なことは言わないという気持ちで挑むことが大切です。
よくある質問① 亡くなる直前の状況について
一般的に人は病院で亡くなるケースが多いですが、突然自宅で亡くなる人や外出中に事故で亡くなる人など様々です。
調査官はまず、故人の最期の瞬間がどんな様子だったかを質問してきます。
税務調査において大切な情報になるため、思い出すのはとてもつらいことですが答えなければなりません。
この質問の意図は、例えば相続開始直前に行われた生前贈与が有効かどうか、また、相続開始直前に引き出された預金の使い道を確認するため等に行われます。
もし、故人が長年寝たきりの状態であった時、その期間中に故人の通帳からお金が引き出されたなら、本人が引き出したのではなく管理していた家族(相続人)が引き出したと予想できます。
そのため、相続人(家族)が知らないと言うことはできません。
また、亡くなる直前に本人の通帳から親族に例えば110万円のお金が振り込まれていても、この時本人が昏睡状態だったなら贈与の意思表示はできないことがわかります。
この場合はもちろん贈与の事実はなかったと判断されてしまいます。
贈与は、あげる側ともらう側であげた・もらったの約束ができていることが要件の一つになります。
故人が、生前に自分で預金を動かすことができない期間があった場合、その期間の入出金については特に厳しく調べられますので、必ずその経緯や使い道いをはっきりさせておきましょう。
よくある質問② 故人と家族(相続人)の生い立ち
故人が生まれてから亡くなるまでの生い立ちについて質問されます。
幼少から学生時代、就職から定年まで、さらに老後の生活など細かく聞かれます。
この生い立ちの質問は根掘り葉掘り質問されるので、この質問だけでも数時間かかるケースがよくみられます。
調査官は質問しながら、手書きの年表を作成していきます。
これは調査官が相続の内容について整理をするだけでなく、後々、質問に対する相続人の答えに矛盾がないか等を把握するために作ります。
他にも、故人と相続人がいつの時代にどの地域に住んでいたかを確認することで、隠している銀行口座がないかどうかチェックしています。
このように、調査官は故人や相続人の生い立ちを質問することによって、相続税の申告などに矛盾や不審な点がないか徹底的に調べています。
よくある質問③ 故人の趣味について
調査官は故人の趣味についても必ず質問してきます。
それは、故人の趣味を聞くことによって、申告漏れの財産等がないかどうか確認したいからです。
例えば、趣味がゴルフならゴルフ会員権に申告漏れがないか、絵画や骨董品の収集が趣味なら申告漏れがないかや評価額が適正かどうか、海外旅行によく行っていたのであれば外国に無申告の預金口座等の財産がないかどうかをチェックします。
また、ギャンブルが好きだったかどうかの質問もあります。
これは、もし高額な不明出金が出てきた時に、ギャンブルで使ったなどと言い逃れできなくさせるためです。
よくある質問④ 故人の日記や手帳について
故人の日記や手帳についての質問もあります。
それは、故人の行動が日記や手帳からわかる場合があるからです。
例えば、子供名義の銀行口座から預金が引き出された場合、もしこの時のことを日記や手帳に記載していたら引き出したのは子供ではなく故人であったと推測できます。
この場合、子供名義の通帳を管理していたのは故人の可能性が高く、もし故人が管理していたのであれば故人の財産であったと認定を受け、遺産として加えられることになります。
よくある質問⑤ 貸金庫について
もし故人や相続人が銀行等と貸金庫の契約をしていた場合、調査官と一緒にその銀行に行って貸金庫の中身について確認することになります。
調査官は貸金庫の開閉記録を調べることができます。
税務調査の直前などに貸金庫を開けていた場合には、その理由について厳しく質問されることになります。
よくある質問⑥ 印鑑について
これは相続税の税務調査の特徴の一つですが、印鑑についての確認や質問があります。
家中にある全ての印鑑の提出を求められます。
印鑑の提出を行うと、調査官はまず印影を取ります。最初の1回目は朱肉を使用せず印影を取ります。
この理由は、朱肉を使わずに印影が取れた場合は、その印鑑は最近使用したものと推測できるからです。
(一般的に税務調査が行われる時期は、相続が発生した後2年後が多くみられます。)
本来なら故人の実印は、亡くなった後に使うことはほとんどないはずです。
ところが、もし故人の実印が最近使用されたとなると、例えば契約書のバックデート等が行われたことが疑われます。
税務調査の直前に文書を偽造する行為があるため、調査官は印影を取ったり、印鑑について確認や質問を行ったりします。
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